[2020.12.11]
期待できる研究成果② ~食べる桑~
2.食べる桑は天然の機能性強壮剤になります
世界中の研究ジャーナル(食品栄養科学、薬学、ライフサイエンス、がん科学、臨床医学分野など)に掲載された桑に関する77編の論文をまとめたレビューが発表されました(Butt ら、2008)。桑には、抗菌性・抗酸化・抗動脈硬化・血糖上昇抑制・免疫賦活・抗がん・神経保護・美白に関する機能性があると紹介されています。 オランダのこの報告の約800年前にわが国の栄西禅師が『喫茶養生記(下巻)-吉田全訳注、2000』の中で、飲水病(糖尿病)や中風(脳血管障害の後遺症)に効用があると記述していますが、学術的な古いヒト試験では、桑葉が糖尿病と高血圧に効果があると報告されています(井上・橘、1938)。21世紀に入ってインドのグループは、Ⅱ型糖尿病患者を対象にして、糖尿病治療薬のグリベンクラミド(5 mg/日)を30日間服用したグループと、桑葉粉末1gを1日毎食後3回、4週間継続して摂取したグループを比較しました。その結果、桑葉粉末グループの方が血糖値の減少・中性脂質の低下・LDLの低下・HDLの増加などが改善されています(Andalluら、2001)。これは、桑葉が医薬品を超えている理想的な証左となります。 われわれのグループは、ヒト試験のモデル生物である線虫(C.エレガンス)を用いて、寿命延伸効果を検討しました。その結果、図2に示したように桑葉のエタノール抽出物では平均寿命を約17%延伸することが確認できました。ポジティブコントロールである抗てんかん薬のエトスクシミドの35%には及ばなかったのですが、両者の濃度はいずれも2 mg/mlですので、単体のエトスクシミドを超える寿命延伸が期待できます(Sillapakongら、2011;シラパコングら、2016)。
【参考文献】
- 1) Andallu, B. ら (2001) Effect of mulberry (Morus indica L.) therapy on plasma and erythrocyte membranelipids in patients with type 2 diabetes. Cli. Chim. Acta, 314, 47-53.
- 2) Butt, M.S. ら (2008) Morus alba L. nature’s functional tonic. Trends Food Sci. Tech., 19, 505-512.
- 3) 井上吉之・橘 宏(1938)桑葉の医薬的利用について. 日蚕雑, 9, 1-8.
- 4) Sillapakong, P. ら (2011) Morus alba leaf extract increases lifespan in Caenorhabditis elegans. J. Insect Biotech. Sericol., 80, 89-92
- 5) シラパコング=ピヤマース・鈴木幸一(2016)食べる桑の機能解析と応用開発.蚕糸・昆虫バイオテック, 85, 69-74.
- 6) 吉田紹欽(全訳注)(2000)栄西喫茶養生記, 講談社, pp. 186.