冬虫夏草で認知症を予防するなら養蚕イノベーションのバイオコクーン研究所
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[2020.12.10]

期待できる研究成果①  ~カイコ冬虫夏草~

1.カイコ冬虫夏草は、老化促進マウスの実験で海馬の傷を修復し記憶を改善します。

これまでの論文では、老化促進マウスの海馬のCA3という領域(空間認識で重要な部分)におけるグリオーシス(神経膠症反応)という病変が、カイコ冬虫夏草の熱水抽出物で完全に消え、記憶が回復するということを発見し、発表しています。 図1には、正常老化マウス(コントロール)、老化促進マウス、および老化促進マウスにカイコ冬虫夏草の熱水抽出物を経口投与したグループの海馬を観察した結果を示しています。

岩手大学発ベンチャー企業株式会社バイオコクーン研究所によるカイコ冬虫夏草の研究成果

マウスの組織化学的な観察結果、ヘマトキシリン‐エオシン(HE)染色ではコントロールの正常老化マウスグループ(A)、老化促進マウスグループ(C)、老化促進マウスに低濃度の熱水抽出物(5 mg/kg/日)を経口投与したグループ(E)、老化促進マウスに高濃度の熱水抽出物(25 mg/kg/日)を経口投与したグループ(G)では違いは認められませんでした。ところが、グリオーシス(神経膠症反応)病変として青紫に染色されるホルツァー染色では、グループ間に大きな差が観察されました。 正常老化マウスグループでは病変は観察されず(B)、老化促進マウスグループではその病変が鮮明に観察されています(Dの図中の白い矢印)。その上驚くべき観察として、これらの老化促進マウスに熱水抽出物を投与したグループでは、病変が激減し(F)、また高濃度の経口投与グループではほとんど観察されませんでした(Hの図中の白い矢印は存在しない)。 これとは別の記憶行動実験で、正常老化マウスの記憶に比較して老化促進マウスの記憶は低下しており、この老化促進マウスに熱水抽出物を経口投与することで、記憶の改善効果が明らかにされています。 以上の研究結果から、カイコ冬虫夏草には脳機能改善効果があり、このことは、将来ヒト試験などを経ることで(寺山ら、2016)、アルツハイマー病を含む認知症、パーキンソン病などの脳疾患の改善のための機能性食品や医薬品の開発が期待できると考えています。

【参考文献】

  • 1) 石黒慎一・対馬正秋・シラパコング=ピヤマース・鈴木幸一(2016)カイコ冬虫夏草の機能解析と応用開発. 蚕糸・昆虫バイオテック, 85: 63-67.
  • 2) 鈴木幸一(2016)国民医療費削減と地方創生を目指した非繊維型養蚕イノベーション🄬の提案.蚕糸・昆虫バイオテック, 85: 59-61.
  • 3) Suzuki, K. ら (2017) Neuro-protective properties of the fungus Isaria japonica: Evidence from a mouse model of aged-related degeneration. In: Atta-ur-Rahman (Ed.), Frontiers in Clinical Drug Research (Alzheimer Disorders),Vol. 6, Bentham Science Publishers, pp.154-186.
  • 4) 寺山靖夫・大塚千久美・鈴木幸一(2016)カイコ冬虫夏草の乾燥粉末のアルツハイマー型認知症脳機能向上に及ぼす効果. 岩手医学雑誌, 68:223-227.