冬虫夏草ものがたり② ~桑成分の抗ウイルス効果~
~桑成分の抗ウイルス効果~
カイコは桑だけを食べて成長します。なぜカイコが桑だけしか食べないかという科学的根拠を日本の研究者が明らかにしています。それは、桑には、1)カイコを引き付ける物質、 2)桑をかむための物質、3)飲み込むための物質、が含まれている唯一の食材であり、カイコはひたすら桑を食べているのです。
1214年栄西禅師は『喫茶養生記』の下巻で、桑は飲水病(糖尿病)や中風(脳卒中)に効果的と記述しています。それから700 年以上を経て、京都大学医学部で糖尿病患者のヒト介入試験が行われ、血糖値の改善が認められたという論文があります。日本人研究者が桑根白皮(桑根を乾燥させた生薬)からその有力候補物質としてDNJ (デオキシノジリマイシン)を発見し、今ではこのDNJ が糖の吸収を阻害し糖尿病が改善すると説明されています。さらに、この DNJ がインフルエンザウイルスの増殖を抑制することが明らかにされています。
ところで、岩手県北上市には桑茶を製造・販売している(株)更木ふるさと興社があります。その近くの小学校の児童たちは桑茶を飲んでおり、インフルエンザによる学級学校閉鎖がないと聞いたことがあります。疫学的な根拠はまだありませんが、科学的な研究が進むことが楽しみです。
参考文献
Hussain, S., ら(2015) Strain-specific antiviral activity of iminosugars against human influenza A viruses. Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 70, 136-152.
シラパコング= ピヤマース・鈴木幸一(2016)食べる桑の機能解析と応用開発, 蚕糸・昆虫バイオテック, 85, 69-74.