[2020.12.13]
期待できる研究成果③ ~食べるシルク~
3.食べるシルクも機能性の宝庫です
5000年以上の養蚕の歴史で、シルクを食べるという発想でカイコフィブロインタンパク質(繭からのもう1つの水溶性タンパク質はセリシン)の食品化に成功したのは、平林 潔博士(当時東京農工大学教授)の研究グループです。 塩酸加水分解法により、高分子の難溶性フィブロインからオリゴペプチドと遊離アミノ酸からなる低分子のシルクパウダーが製造され、このシルクパウダーを高コレステロール症とエタノールの大量投与のラットに摂食させることで、肝機能改善の薬理効果が認められました(平林、1991)。これが研究の発端となり、これまで国内外の食べるシルクに関する研究成果をまとめてみたところ、図3(右)のようになります。 われわれ研究グループは、カイコフィブロインパウダーでマウスの毛髪のアンチエイジング効果を確認しています(Yamamotoら、2011)。図3(右)に示した機能性解析のヒト試験はまだ一部であり、製造法も含めて今後の機能性の実証が期待されます。
【参考文献】
- 1) 平林 潔(1992)絹を食べる. 化学, 47(28), 25-28.
- 2) 苅間澤真弓・鈴木幸一(2016)食べるシルクの機能解析と応用開発. 蚕糸・昆虫バイオテック. 85, 75-79.
- 3) Yamamoto、K.ら (2011) Peptides from Bombyx fibroin counter D-galactose-induced hair aging in mice. Int. J. Indust. Entomol., 23, 201-206.